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●NHK BS-1「食とグローバリズム」

 もう先々週になるかな、NHKのBS-1で「食とグローバリズム」と銘打ったドキュメンタリーのシリーズが放映されていた。どれもけっこう面白かったが、皆さん見ましたか?(再放送がいずれあるはずなので、興味を持った方はぜひどうぞ。→今しらべたら、今週の午前中にやっているみたい。明日の朝のニジェールのドキュメントはお勧めだよ~。)

 それぞれの出来事は、内容的には、どこかで小耳にはさんだことのある事ばかりだが、世界市場という空から見下ろす視点(=”鳥の目”)ばかりでなく、現地の具体的な状況を伝える、地を這うような”虫の目”がいちいち興味深い事実を教えてくれる。


 衝撃が強かったのは、「ニジェール 飢餓の構造」だ。
 ニジェールでは毎日500人の乳児が栄養失調で死んでいくような、大変な飢餓状態が長らく続いている。アフリカ、飢餓、と来れば、「ああ、また飢饉か」とつい連想してしまうが、実は微妙に全然違う。なんと穀物は、商人の倉庫にうなるほど眠っている! 外国のNGOがそこから穀物を買い取って援助活動したりするくらいなのだから、食べ物はあるところにはあるのだ。
 ただ、農民たちが貧乏で、高騰した米や麦を買う力がない。ならば国内法を是正して、価格安定化を図ればいいではないか、と誰もが思うだろう。だがなんと!国会議員の8割が商人出身で(それはいいとしても)読み書きできず誰も法案の審議などできないのだという! イコール、国会が機能しないということだ。
 一方で政府も、先進国からの資金援助がないと国を動かせないという理由で、IMFや世界銀行の命令を聞かざるを得ない(自由化と市場開放というヤツだ、ああ自由主義=資本主義)。その結果、特定の国、特定の企業の投下する巨額のプロジェクトの周りに、国内の優秀な頭脳が群がるという形になっている。平均の10倍金をかせぐ彼らを見ているうちに、ニジェールの公務員たちは耐え切れなくなり、ついには国中に腐敗が広がってしまったという。つまり、富裕な世界の国から資金は落ちると言えば落ちるのだが、落ち方に問題がある。その結果、貧富の差が広がるばかりで、国民全体の生活向上に全くつながっていない。というわけだ。
 多産を良しとするニジェールの宗教文化もからんで、”貧乏人の子だくさん”状況は一向に変化を見せない。こうして乳児の飢餓死が広がる。食い物は目の前の、そこにあるのに。
 この現実に対して、ニジェール政府は「先進国が約束した援助を履行しないからだ」と言い、先進国側は「いくら金を投入しても改善しない」と文句をつける。国内にも国外にも問題があるのは事実だが、それにしても強制的な市場開放が貧乏な国にとって毒になりこそすれ、全く薬にならないのも明らかだ。援助の方法を実情に合わせて改善しようという努力は双方から始まってはいるようだが、まだまだ道は遠い。人材育成のための教育の問題も、地方はどこも貧乏で、マジで黒板も買えないような学校ばかり。これでは一向に教育レベルは上がらない。
 だが公平に見たところ、一番の問題は先進国の”援助”のあり方で、その本音が資源の獲得だったり市場の確保だったり、結局は自らの儲けを狙った資本主義貫徹優先であることが非常に害悪であるような気がする。ついで、ニジェール政府の無策と腐敗か。
 結局、「共通のルールで商売する」と言えば聞こえはいいが、それが事実上、赤貧の人の足元を見る結果になっているのだ。だが取引相手が飢え死にするようなやり方が、フェアと言えるのだろうか? あらかじめ極端な競争力の違いがあるところからスタートして、適正な競争など実現するのだろうか? IMF体制も本当のところは金持ち国がそのまま金持ちで居られる体制維持の機関ではないかと批判されても仕方ない現実=膨大な数の乳児死亡数がある。もちろん、ニジェールの人の責任も皆無ではないにしても。
 今あるグローバリズムは、要するに資本主義の世界的完成形態というか、隅々まで金の力が行き渡った世の中というか、資本のヒエラルキーの維持というか、スタート時点でのチャンスの公正さが確保されていない金持ち優先ルールなのだ。

 …と、ここまで書きつつも、なんとなく居心地が悪い。自分で書きながら、優等生を演じているみたいな気分になってくる。僕は曲りなりにも(経済的な)先進国の一員として生きているのだ。
 僕らに何ができるだろうか? とりあえずフェア・トレード商品をもう少し買おうかな、とは思ったのだが…。


「エチオピア コーヒー生産国の悲鳴」も、コーヒーという商品がとても身近であることから、やはり”何とも言えない気分”になる番組だった。たとえ高品質のコーヒー豆を生産しても、ニューヨークの市場では、世界を席巻する数社の巨大コーヒー企業に買い叩かれて、豆の価格は近年ずっと低迷しているのだそうだ。その買い叩きは半端なものではなく、良い豆を作るために農民たちが日夜努力をしても、十分に食べていけないほど価格は低い。
 企業の論理は、最大効率・最大利益を目指す。特に最近のグローバル企業は、その目的のための最速処理マシンと化して、性能をよりシェイプアップしている。結局、農家が血と汗を流して作った作物が消費者の口に入るまでの過程で、一番金を集めるのは企業なのだ。
 もちろんその背景に、先進国の消費者が「1円でも安いコーヒーを求める」というベクトルも作用しているのだろう。スーパーの店頭に並べばやはり、迷った時は安い方を買うのが人情だ。
 だけど思う。こんなことを続けていれば、やがてコーヒー生産者の生活は荒廃し、彼らの社会は破綻し、結局良い豆の生産技術そのものがなくなって行くのではないか。それに、言い訳ではなく、誰だって”人を赤貧に陥れたくてコーヒーを飲んでいる”のではなかったはずだ。
 ここでもフェア・トレードが出てくる。イギリスのあるコーヒー商社は、市場を通さず適正価格で高品質の豆を直接取引きしている。流通量はまだまだ少ないだろうが、そういう試みを実践している人たちも居る。このような活動を見ていて、金持ちの道楽と批判することはできないと思った。いやたしかに、フェア・トレード製品は安いとは言えないが…。
 そういえば、僕が日々飲んでいるコーヒーはフェア・トレード製品ではなかった。我々の「安いほうがいいかなぁ~」という消費行動が、何万人何億人の束になると、ものすごい圧力になって途上国に襲い掛かる。世界企業という高性能マシンに増幅されて…。


「アマゾン 大豆が先住民を追いつめる」――これも見ていてつらい。内容は略するが、大規模に大豆を生産することで一攫千金を狙うスペイン系の大農家たちが、国道が整備されて大分便利になったアマゾン周辺に引っ越して来て、森に暮らす先住民たちの生活を脅かすという話だ。森を不法に伐採するばかりでなく、時には武力を使って先住民を殺したり追い出したりもこの国では茶飯事だ。大豆ビジネスのチャンスが到来した背景には、アマゾン川の中流に大きな港が建設されて、タンカー等で運び出しが容易になったという経済上の環境変化もある。(この運搬は例によって世界的大企業が行っている。)
 政府機関の取り締まりも行われてはいるが、なにせアマゾンは広く追いつかないうえに、地方政府が巧妙に農家の味方をしたりする。アマゾンの森林は先住民にとってだけでなく、全人類的に大切な場所なのだが…。


「キャビア 密漁シンジケートを追う」は、ロシアのプロダクションが製作していて、周辺国の事情にとても詳しいのが興味深かった。他国の取材ではこうは行かないような気がする。
 カスピ海周辺国が、キャビア=チョウザメの卵を競って乱獲しあっている話。カスピ海沿岸の漁民には、他に産業が無く、命がけでアンダーグランドの乱獲組織に入らざるを得ない。その実態には本当に身震いする。警察に追われるだけでなく、深夜真っ暗な中、高速艇で海を走るため、一番怖いのは密漁漁船同士の衝突だという(ぶつかれば即死だ)。
 しかも、このまま乱獲が続けば資源は枯渇して、チョウザメは絶滅するというのに…。
 ミクシーにこの番組の感想を、「キャビアなんて争って食わなくてもいろいろ美味しい魚卵はあるのに」と書いたら、「日本近海でも漁業資源を争って発砲事件が起こっているよね」とコメントされた。そうだ。去年も、ロシアの警備船に銃撃・拿捕されて若い漁師がひとり死んでいたっけなあ。たしかにカニは食いたいが、人が死んでも食いたいとまで思ってはいないはずなのだが…。

 キャビアもそうだが、いくぶん余裕ある者の贅沢が、束になるととんでもない圧力(暴力?)となって社会に立ち現れてしまうのはどうしてだ。お金というシステムに根本的欠陥があるのでないか、などと抽象的なことを思ってもせんないし。どう考えればいいのか…。


 ふだん、アフリカのことや南米のことなど、あまり考えないけれども、また、実際物理的にも遠いわけだからその感覚も当然なのだけれども、僕がどんな商品を買うかで、ある国の子供たちの生死が決まったりする、そんなタメの無い世の中になっている。
 ある意味世界は近く、遠くのものが簡単に手に入るし、安いとか旨いとかで選ぶことができる立場に僕はいる。しかし軽い気持ちで消費した結果、ある者は飢えある者は殺されていることまでは知らされない。薄い壁のあちらとこちらで、商品と金は動いているが、人の生活や生死は見えてこない。こういう番組でも見なければ。

 この番組を見ていると”グローバリズム”というシステムが、世界中で同時に作動する、とんでもなく巨大で非人間的なマシーンに見えてくる。日本で起こっている雇用の不安定化や所得の格差増大も、実は、このシステムとの関連で起こっている。
 と同時に、先進国としての経済的優位(たとえば安価で美味しいコーヒー)の中にぬくぬくと浸っている自分たちの姿も同時に見えて、複雑な気分になる。この問題に関しては、先進国に生きているだけで、決して”正義”の立場に立つことはできない。
 複雑な気分を抱えたまま、ここらで番組の感想は終り。
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