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●”自己責任”思想の呪縛は大きくて強力だ――「貧困襲来」を読んで

「貧困襲来」を読んだ。貧困襲来


 たぶんあちこちで紹介されている本だと思うが、医療・福祉関係者には視野を広げる意味でオススメしたいし、人の相談に乗ることが多い職業(いわゆる援助職)の方々にも広く読んで欲しいと思った。その理由は、「<貧困>はいろんな問題の背後に隠れていて、その原因として影響を及ぼしている」(本書48pより引用)、という視点を持って欲しいからだ。
 自分の関わる様々な問題のベースとして、貧困が足下にある場合、物事の順序がまるで変わってこなければならない。別な言い方をするなら、日本は今、貧困を念頭に置かねばならない世の中に知らぬ間に様変わりした、ということをはっきり認識する意味でも重要だ。
(援助職系の人々は、経済的には相対的に恵まれた立場に居る人が多く――特に公的機関で働いている場合――そのようなことに気づくチャンネルが弱い傾向があると思う――自戒をこめて。「知らぬ間に」と書いたが、それはお前が今やっと気づいただけだろうと言われれば返す言葉がない。)

 例えば自殺に関しても、以前から僕は、「うつ病対策や相談電話を充実させたって、(無駄とは言わないが)たかが知れている。中高年の自殺が多いのならこれは、ズバリ労働環境の問題ではないか」と思っていた。(平たく言えば、「精神科医やカウンセラーにおっつけんなよ、役人のアリバイ作りだろ、そんなもんに付き合ってられるか」ということだ。)本書を読んでさらに明確になったのは、労働環境(および雇用)の問題や、自殺の問題ばかりでなく、果ては世相やもしかしたら少子化まで、(問題のすべてとは言わないが、かなりの部分を)<貧困>で説明できるかも知れない、ということだ。

 そうすると、以前仕事で関わっていた、<不登校>や<引きこもり>の問題も、少々違う視点から見えてきた。これらの問題を延長してスペクトル状に並べると、さらに<ニート>、<フリーター>、<派遣労働>、<不安定雇用>、<サービス残業>、<リストラ>、<中高年のうつ>、<自殺>および<過労死>と、ある程度の関連で並べることができる。

 そして、スペクトルの一番端っこに置けそうなのは、貧困による死だ。そう、北九州市の保護課が生活保護の給付を”水ぎわ”で阻止した結果、餓死で亡くなった市民が出たという、例の事件が分かりやすいサンプルだ。ここで改めて、”自己責任”という言葉は――まぁ一体誰が流行らせたのか知らないが――支配者側にものすご~く都合のイイ言葉だと思う。
 そりゃあどんな行為にだって、ごく微量には自己責任の成分が含まれているだろうよ――理屈の上では。だが、餓死をするまで耐えねばならない自己責任なんてあるのか?一体、我々は何のために税金を払っているのか?(含む、消費税――当然ながら)街へ出れば、コンビニやレストランでは売れ残りの食品が機械的に捨てられているのに、一方では餓死ィイ~?世界指折りの経済大国日本は、このように気が狂ったとしか思えない状況にある。

 だが、本書を読んだ後では、混乱して見えていた事態がまとまった形で見えてくる。こういう問題に際して使われる”自己責任”という言葉は、何のことはない、単なるまやかしだ。騙されたままの市井の人々は、「自己責任、自己責任」と互いに呪文を唱えながら、結局は足を引っ張り合っている内に、振り向くとセーフティ・ネットが外されようとしているのだ。

 つまり、本書が浮き彫りにしようとしているのは、日本という国が、(主に官僚機構が中心となって)おおむねどのような方向性で福祉制度を動かし、また変えようとしているか、という”全体の流れ”である。日本の権力者たちは、福祉への全体のパイを、(”自己責任”という風潮を念入りに仕込んでおき、異論を封じる空気を作った上で)姑息な手段で小さく切り詰めようとしている。
 それがどういう理由と動機によるものなのかは、また別の問題で、「国際競争に負けないように構造改革」した結果だと、またぞろの御題目のごとく説明されるのかも知れないが、いずれにせよ、国民が餓死して成功する改革とは、少なくとも僕には意味不明だ。

 本書で印象的だったフレーズは多々あるが、中でも、「一般世帯の母子世帯化」(70p)と「日本社会の『寄せ場』化」(72p)は痛かった。
 日本では母子世帯はこれまでも、不当に貧困ラインの生活を強いられて来たわけだが、たとえ父親が居て”大黒柱”として働いたとしても、不安定雇用のため十分な収入が得られなければ、それはある意味で「一般世帯の母子世帯化」とも言えると著者は言う。また、寄せ場(=日雇い労働者が集まる街――かつてなら山谷、釜ヶ崎など)の機能が一見衰退したように見えるが、それは日本中どこででも不安定雇用を回せるシステムが出来上がったからだと言う。そこに、派遣法改悪による人材派遣企業の躍進、いや跋扈と、携帯電話が「日本全国どこでも寄せ場」化に一役買ったのは言うまでもない。

 なぜ日本が今のように荒涼とした風景なのか、僕はある程度分かった気がする。官僚や財界に対しての不信は限りないが、「おまえら、刈る草も無くなるぞ」と言っておきたい。同時に、ここまで状況を放置してきたのは一般市民の側でもあって、弱い弱いと言われる日本の市民セクターをどう育てたら良いのか、考えていかねばならない。
 それにしても、少子化について「母乳で育てましょう」とかワケ分からんことをほざいていた安倍ちゃん達、「じゃあ母親が母乳をやれるような環境を作れよ」とあの時心底思ったよ。政治家の仕事は説教じゃないだろうに。

 本書が提唱する貧困問題から見えてきたのは、明らかに支配層が貧乏人を切り捨てにかかっている、ということだ。官僚の動きも省庁の利益中心で、かつてのようになんだかんだ問題含みでも一応は国民のことを配慮した部分も持つ行政とは思えない。逃げ切るつもりなのかな、あんたら、もしかして?
 生活に関わるような大切な社会システムに、国民の声が反映されていないという現状は、多くの分野にまたがった現象に思われる。医療の崩壊、地方の疲弊、その他いろいろなことが、日々の生活にのしかかってくる。それぞれどれも大切な問題だが、とりあえず<貧困>が大きなキーワードになりそうだ。
 考えてみれば一番不思議なのは、街でホームレスを見かけても、つまりあれだけハッキリした窮乏の現実を――今日明日死んでも不思議でないほど追いつめられた姿を――目の当たりにしても、我々が<貧困>問題の存在をさほど意識してこなかったことだ。(それだけ”自己責任”思想の呪縛は大きくて強力だ。)今現在、健康で職があって働いている人も、ちょっとした不運が重なるとどうなるか、その実例を本書から知っておいた方がいい。
 決して人ごとではないと感じることからはじめよう。と、むしろ自分に向けてつぶやく。

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コメント


沢山のひとりひとり、いきてくことに本気出してほしい どんな状況であれいきてけること信じてたい。小さい世界でいいからいきてければ  こんなちょっぴりなコメントは しちゃいけないのかな もっと賢いコト考えなきゃだめかな

ごめんなさい、自分自身いきてくことに本気なんかだしてないや。かなりいいかげんだ。理性もあんまりない。でも昔4人目産まれたとき、貧ボーで最悪でめちゃくちゃなでドロドロな状況でも母乳がでたんだよ・・・そして完全母乳。上手いこといえなくて馬鹿さ加減が悔しいです。

まっしゅ様、コメントありがとうございます。
僕の書いていることも、あまりまとまっていません。
が、それでいいんじゃないでしょうか。
何か言わないと、知ることができませんから。
時々うかがいます。

ユッキー様の記事、色々読ませていただきました。またここにつなげていいものか分からないのですが。子供おっかけまわしてドタバタと一日が過ぎてゆき夜中に新聞読むのがやっとですが、目の前にあることを全力でやることが 世の中をも変えられるかもしれないなんて 思えますか?なんだか微妙な質問ですね・・・。力のない一個人が出来る大きなコトってユッキー様はどんなことだとお考えでしょうか。

>まっしゅ様へ
大事な問いですが、即答できなくてしばらく考えていました。
僕なりの答えは、
「自分の生活実感から発言すること」
だと思います。
評論家のように広く情報を得ることは、忙しい人にはできません。
しかし、その忙しい毎日こそが多くの人の共感を得られる部分ではないでしょうか。
何でも広く深く理解した方が理想的ですが、そんなことできる人間はあまりいません。
もちろん、できる範囲で人の話を聞いたり(読んだり)は、あったほうがいいと思いますが。
今日はこんなところで。

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